相続放棄制度

 相続放棄とは一切の財産を相続をせずに全て放棄してしまうことを云います。

 ある方が亡くなり相続が開始したら相続人が法定相続分に従って財産を相続することが基本です。しかし相続財産は必ずしも現金や預貯金、不動産等のプラスの資産だけではありません。

 故人が借金を残しているような場合にはこれらの借金等のマイナスの資産も相続財産に含まれてしまうのです。(プラスの財産のみを相続しマイナス財産は相続しないということはできません。)仮に借金のようなマイナス財産をも相続してしまったケースにおいて、相続したプラス財産の中からこの借金を支払えない場合には、相続人ご自身の財産から故人の借金を支払わなければならなくなります。

 そこでこのような事態を避けるために相続放棄制度を利用します。相続放棄をするとその人は初めから相続人ではなかった扱いになるので借金も相続せずに当然その支払をする必要もなくなります。

 それでは相続財産中に借金があるにも拘わらず相続放棄をせずに放置していたらどうなるのか? ⇒相続人自身の財産が差し押さえられてしまう可能性があります! この場合はまず相続債権者(俗に云う「借金取り」のことです)から借金の支払督促が来ます。電話や郵便などで督促が来るので、まるで自身が借金苦であるかのような扱いを受けます。支払をせずに放っておくと相続債権者から裁判を起こされてしまいます。そして裁判所が判決を出したら、相続債権者は相続人の遺産に対して強制執行(=差押)をしてきます。

 このとき差押えの対象になるのは故人の遺産だけではなく、相続前から自身が元々保有している財産も含まれます。もし相続人に自分の家がある場合、相続債権者はその家を競売にかけて債権回収することもできるのです。借金を相続するとその借金は「故人の借金」ではなく「相続人自身の借金」になってしまうからです。

  そのためもし相続財産に多額の借金が含まれている可能性があるのであれば、早期に相続放棄する方が賢明でしょう 。